めぐる季節を感じながら 〜シュタイナー教育と祝祭〜 春
- 祝祭
- 春
- シュタイナー教育
2022年03月13日
大友 綾
福岡シュタイナー学園 教員
目次
はじめに
みなさん、はじめまして。今日から少しずつ、季節の祝祭のこと、子育てのこと、シュタイナー教育を取り入れた暮らしのことなど、私なりに感じたことを綴っていきたいと思います。お付き合いのほどどうぞよろしくお願いします。
祝祭とは
さて、シュタイナー教育では、季節の移り変わりを感じることをとても大切にしています。自然界のめぐりと一緒になって、目に見えない世界のリズムに沿って地球全体と結びつく。それを感じるために「祝祭」を行います。
祝祭というと、文化や宗教の違いで世界には様々な形のものがありますが、私たちが考える祝祭は、地域や文化の伝統を大切にしながらも、どの場所であっても、どの時代でも、普遍的で変わらないものもの、そこに魂が感じられるもの。
そのようなものをイメージしながら行っています。それは大きなお祭りや大げさなものでなくても、季節の移り変わりを肌で感じられる場で、人が集い、喜び合うことができれば、それで十分素敵なお祝いです。
春の祝祭の様子
今日は、私が子育てをしていたニュージーランドのシュタイナー学校での春の祝祭の様子をお届けします。
ニュージーランドでは、春がやってくるのは9月の初め。ちょうど日本では秋の訪れを感じる頃です。ここでの冬は、日本ほどは寒くないマイルドな気候ですが、それでも人々は冷たい雨が降るどんよりした冬の空模様を眺めながら、今か今かと春の訪れを待ちます。
風が暖かくなり、モクレンやプラムの蕾が膨らみ始めると、春がやってきたのを知ります。そうすると、心待ちにしていたSpring Festivalと呼ばれる春の祝祭が行われます。
幼稚園では、大きな芝生の公園に集まり、お庭や野原で咲いた春の花々を持ち寄って花かんむりを作ります。
そして、それをかぶって歌やダンスを楽しみ、みんなで大きなゴザを広げて持ってきたお弁当を食べてお祝いします。大人も子どももおいしいものを囲んで楽しくおしゃべりしながら春の暖かな日差しを感じます。
最後は先生が子どもたちの手をひいて森の中へ連れて行ってくれて、土の下で目を覚ました小人や花の妖精たちのお話を語ってくれます。子どもたちは、森の中で耳を澄まし感覚を研ぎ澄ましながら先生のお話を聞いています。目に見えない存在をすぐ近くに感じながら。
虫も、鳥も、土の下の種も、木も、そこかしこにある全てのものが春の訪れを喜んでいる!子どもたちの目に映るまわりの自然の姿は、こんな風に子どもたちとつながって、「うれしいな。春が来たよ!」「妖精たちが起こしてくれたよ。ありがとう!」と語りかけてくるのです。
今「ここ」にいる自分を感じる
こうして、大人も子どもも季節の移り変わりを感覚すべてで感じ、喜び、目に見えない世界のリズムと繋がりながら自分が今ここに「いる」ことを感じていきます。
このようなささやかでありながらも豊かな時間をともに過ごす子どもたちの心は、たくさんの温かなつながりを感じながらさらに生き生きと育っていくのだと、私は我が子たちの様子を見ながらいつも感じています。
私は今「ここ」にいる。様々なつながりの中に自分がある。そんな大切なねっこを、めぐる季節それぞれの美しい祝祭で育ててもらいました。
何年経っても、子どもたちの心の中にはこの美しい情景があり続けています。